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管理職など傾聴する側の自己愛の傷つきのケアも大切

今回は次のFBページの2つの投稿を元に、最近カウンセリングの世界だけでなく一般にも広がりを見せている「傾聴」について少し書かせていただきます。
https://www.facebook.com/sinri.counseling.room/posts/644679812279449
https://www.facebook.com/sinri.counseling.room/posts/646708732076557

企業にも急速に普及し始めている傾聴

今、特に企業の現場などで、管理職が部下の話を聞く際に「傾聴」のスキルを用いるケースが急速に増えて来ていますが、一つ気になるのが話を聞く管理職側の心理的負担を増やしてしまっていないだろうかということです。

傾聴では実際に行った方でしたらご存知かと思いますが、一般的に行われるいわゆる会話のキャッチボールとは異なり、自らの心理的なニーズはすべて脇に置き、かつどのような話に対しても、つまり到底受け入れ難いような話に対しても、決して反論せずに受容し続けることが期待されています。

ですがこれは「相当な心理的負担」をもたらす行為であり、それゆえ元々は「精神的なタフさ」を備えることも含めて十分なトレーニングを積んだ心理職に携わる者によって用いられてきたテクニックです。
ですから本来はセミナーで少しやり方を教わっただけで簡単にできるものでありません。十分な備えなしにテクニックだけを使っても、心の方がストレスによるダメージを受けてしまうのです。

傾聴する側に「自己愛の傷つき」は避けられない

もう一点は私の専門の「自己愛」の問題です。といっても「健全な自己愛」についてです。
自らの心理的なニーズはすべて脇に置き、かつ到底受け入れ難いような話に対しても決して反論せずに受容し続ける行為は、自分をないがしろにすることに等しく、したがってそのこと自体はメンタルに与える影響という点では極めて不健康なことです。
ですから自分をないがしろにする、言葉を変えれば粗末に扱い続ける傾聴という行為は必然的に自己愛(=自尊心)の傷つきを伴います。

傾聴を十分に機能させるためには何らかの見返り(報酬)が必要

ではこの自己愛の傷つきに対してカウンセラーはどのように対処しているのでしょうか?
それはお金です。自己愛の傷つきの対価としてお金を、それも一般的な給与水準と比べてかなりたっぷりといただくことで「これが仕事だから」と割り切れるのです。

ところが管理職に携わる方に単に業務の一環としてその実行を要求し、それに対して何の見返りも与えられないならば、業務が増えることに加えて、前述の自己愛の傷つきという深刻な問題が発生していしまいます。

ですから金銭的なものであれ心理的なものであれ、何らかの見返り(報酬)が与えられない限り、短期的には効果をもたらしても長期的には管理職のメンタル不全を引き起こしてしまう可能性があります。
加えて仮に十分な報酬が与えられたとしても、それでも上述のように傾聴は簡単に行うことができるものではないのですから、そのスキルについて厳しく評価することは禁物です。

最後にこれは私見ですが、傾聴という本来は極めて専門的であるはずの技法が「やり方さえ覚えれば誰でもできる」という考えを元に安易に普及してしまっていることこそが問題の発端であると考えています。

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