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共依存的なDVの被害者は、関係を断つためには加害者の許可が必要と考えている人が多い〜ドラマ『きみが心に棲みついた』を例に

今回の記事はまたドラマ『きみが心に棲みついた』の考察に戻ります。
現実社会で生じている事例にも参考になる展開が見られたためです。

星名と決別するために、その星名の無理難題を聞き入れる今日子

今回参考にするのは、主人公の今日子が交際相手の吉崎に、仕事と嘘をついて元彼の星名とデートをし彼のマンションまで行き、後ほどそのことが吉崎にバレて別れを切り出されることになってしまった第8話から9話にかけての出来事です。

このような事態になってしまったのも、星名から「最後に1日デートで付き合ってくれたら、もう関わらないと約束する」旨のこと言われ、その要望に従ったためです。
しかしこれらのシーンを見て「そんな無理難題を聞き入れる必要はないはず」、あるいはこれまでの星名の言動から「そんな口約束は信じられない」などと思われた方もいらっしゃるのはないでしょうか。

支援を受けてもDVの加害者から逃れられないケースでは、共依存がその一因

実はこの今日子と似たような思考あるいは行動のパターンが、DVの被害者の方によく見受けられます。

DVの被害者の方が何らかの理由から加害者の元を離れたいと思っても離れられない場合に最初に支援を求めるのは、多くの場合カウンセリングサービスではなく警察や自治体の機関、あるいは法律相談やシェルターなど民間の支援団体のようです。
ですからDVの相談で私のカウンセリングルームを訪れる方の多くは、それらの支援が役立たなかった場合です。

そしてその支援が役立たなかった理由の典型が「支援の内容が加害者から引き離すこと」のみであることへの不満です。

※この不満の内容からも、支援を受けてもDVの加害者から逃れられないケースでは、共依存がその一因となっていることが推測できます。

補足)考察対象を明確にする目的で、加害者・被害者という用語を使用しています。

共依存的なDVの被害者は、関係を断つためには加害者の許可が必要と考えている人が多い

そこで相談者の方から詳しくお話を伺うと、前述のような不満を感じていらっしゃるのは、離れることを相手が許すはずがなく、したがってその許されるはずがないことを無理やり実行することを促すような支援では役立たないとお考えであることが分かってきます。

つまりこのようなDVのケースでは、加害者の方は別れるためには加害者の許可が必要であるかのように考えていらっしゃることが推測され、この点が冒頭で紹介したドラマ『きみが心に棲みついた』の今日子の星名に対する態度と似ています。
今日子も星名から離れるためには、その星名に納得してもらうために、星名のいうことを「何でも」聞かなければならないと考えているようだからです。

主体性の乏しさが相手に容易に支配される一因になっている

また両ケースから感じられるのは主体性の乏しさです。

自分の意思が存在しないか、もしくはあっても相手の意思ほどは価値がないものと思っていると、常に相手の欲求の方が優先されることになり、どんなに苦痛なことでも渋々それに従うことになってしまいます。
この点は、大学生の時にビデオで撮影された行為や、ファッションショーの出来事など、これまでの今日子の人生にかなり当てはまるのではないでしょうか。

主体性の乏しさが改善しないと、いずれまたDVの被害に遭う可能性がある

以上の考察から、DVでは、もちろん加害者に一番の問題があるとしても、被害者の方も、いつまでも主体性が乏しいままではDVのターゲットにされやすい状態が続くため、またいずれ同じような被害に遭ってしまう可能性があると考えています。
こうした方々に必要なのは、少なくても容易に他人に支配されない程度に自己主張できる主体性を身につけることです。

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