以前にカウンセリングのFBページに、精神分析の「臨床におけるナルシシズム」の教本としてトルストイの「アンナ・カレーニナ」が挙げられているため購入した旨のことを書いたことがありましたが、その本の中では主人公のアンナはヴロンスキーと共にナルシシズムの極みとして散々な評価を受けていました。
しかし今晩、吹き替え版が放送される番組紹介を見ると「欺瞞に満ちた社交界と家庭を捨て、ヴロンスキーとの真実の愛に生きる主人公」とむしろ理想視されており、その評価の落差に驚きました。
二人への酷評には著者のネヴィル・シミントンが対象関係論という学派に属し、その学派は私がよく援用するハインツ・コフートの自己心理学と比べて「自己愛」に関して非常に不寛容で「自己愛=病理」に近い考えを持っていることも関係していると思われます。
これは対象関係論がフロイトの理論をラディカルに推し進めたとも言われるメラニー・クラインの理論の影響を強く受けており、その先祖?とも言えるフロイトの対人関係の発達論では「自体愛→自己愛→対象愛」の発達過程が想定、つまり自己愛とは対象愛へ移行する前の未熟な段階と考えられているためと思われます。
そのことを差し引いても、多分に自己愛的な関係がどのように理想化されているのか興味がありますので、今晩放送される映画を見てみようと思っています。
放送はBS-TBSで3月17日(火)の21時00分~23時24分です。
参考文献:
ネヴィル・シミントン著『臨床におけるナルシシズム-新たな理論』、創元社、2007年
レフ・ニコラエヴィチ・トルストイ著『アンナ・カレーニナ』