昨日、フジテレビのドキュメンタリー番組「ザ・ノンフィクション」で広島県福山市にあるフジゼミという小さな学習塾が取り上げられていました。
塾長の藤岡克義さんの熱血指導が評判の学習塾らしいですが、私が番組を見て感じたのは次のようなことでした。
生徒の主体性を最大限に重視する教育方針
あくまで番組を見て感じた私見ですが、藤岡塾長は見守りつつも余計なお節介はせず、できるだけ塾生の自主性に委ねる教育方針の方のように思えました。
例えばそれは自習がメインのカリキュラムに表れていましたし、藤岡塾長の塾生への接し方も相談にはいつでも応じますが、しかし積極的にドンドン声をかけるようなものではないことから感じられました。
ただこうした生徒の主体性を最大限重視する方針を貫くことは簡単ではないはずです。
なぜなら結果(合格実績)を出せなければ塾の評判は高まらず、しかも入塾生の多くは偏差値20~30台の人だからです。
ですから生徒の可能性を本当に信じていなければ到底採用できない方針だと思います。
学習意欲で入塾時に生徒をアセスメント
そして、こうした方針を支えているのは藤岡塾長による入塾生の学習意欲のアセスメントではないかと感じました。
例えばそれは人から言われて仕方なく?面接に来た人に対して「お金と時間の無駄」と断言し入塾を認めなかったシーンであったり、あるいは番組に登場した塾生の多くが将来に対する明確な目標を持っていたり、やりたいことがハッキリしていることから感じられました。
こうして学習意欲満々の生徒のみを受け入れることで、上述のその生徒の主体性を最大限重視する方針を採用することが可能となっているのではないかと感じました。
人生経験から学び、考え方を自主的に変えた人が訪れる学習塾
また入塾まもない塾生に対して行われたミーティングの席の藤岡塾長の「すでに偉業(大学合格)を達成した先輩たちを見て凄いと思うかもしれないけど、すでに君たちも凄いことを達成している」旨のメッセージも、最初は励ましの言葉と思いました。
ですがこの言葉は励ましでも何でもなく事実だと思われます。
塾生の多くは偏差値20~30台の勉強嫌いで、中には少年犯罪歴もある人もいます。そうした人が今は学習意欲に満ち溢れ、朝から晩まで自主的に勉強するように変わったのですから、この変化だけでも大変なことです。
ですからフジゼミという学習塾は、人生経験から学び、考え方を自主的に変えた人が訪れる場なのだと感じました。
学習意欲を支える理想化自己対象の働き
その塾生の学習意欲を支えているのが、これまでの自己愛講座でたびたび取り上げてきた自己心理学理論の理想化自己対象(欲求)と思われます。
番組では藤岡塾長や先輩が模範的な人物としてリスペクトされている様子が繰り返し描かれていました。
今は学習意欲が高くても、元々は勉強嫌いだった人達です。
こうした人にとっては何かのきっかけでスランプに陥った時には、こうした人生の目標となり得るような人の存在やその人との関わりが不可欠なのだと思います。
そうして憧れの人の存在を心の支えにしながら波はありつつも努力し続け、やがて諸先輩方のような偉業を達成して、自分の人生を切り開いていくのだと思います。
すべてが理想化されるのが理想化自己対象の働き
最後に塾生の前での喫煙行為は、あまり好ましいことではないと思います。
なぜなら理想化自己対象として機能している人に対しては、すべての行為が正しいこと・素晴らしいこととの錯覚が生じるためです。
この理想化自己対象の負の側面は、教育者だけでなく組織のリーダーや援助職の方は十分注意する必要があります。