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WHOの喫煙場面がある映画の成人指定の勧告と、表現の自由をめぐる議論への考察

WHOが喫煙場面がある映画の成人指定あるいはタバコの有害性喚起を勧告

ご存知の方もいらっしゃると思いますが、WHO(世界保健機関)が喫煙場面がある映画の成人指定あるいはタバコの有害性喚起を勧告したそうです。
WHO、映画中の喫煙シーンが若者に悪影響を与えていると報告 | マイナビニュース

なおWHOが後述の「表現の自由」の領域にまで踏み込んで勧告を行う背景には、次のページにも示されておりますように、タバコの健康被害に関する実証的なデータが揃って来ているためと考えられます。
(2つめの年間600万人の死亡者数はWHOによる試算です)

受動喫煙で年間6800人が死亡 厚労省研究班による調査/日本生活習慣病予防協会

喫煙の健康影響は深刻 年間600万人が死亡 世界禁煙デー/保健指導リソースガイド

WHOの勧告に対して「表現の自由」の侵害との声も

もっともこのWHOの勧告に対しては弁護士の方などから「表現の自由」の侵害との声も上がっているようです。

喫煙シーンのある映画「成人指定に」WHOが勧告 「表現の自由」の侵害ではないか? | Yahoo!ニュース

さらにBLOGOSが行ったアンケートでも規制反対の声が8割以上を占めました。

「喫煙シーンのある映画を『成人向け』指定」 反対が賛成大きく上回る | BLOGOS

非喫煙者の方はタバコの害をどのように考えているのか

なお上述の2つのリンク記事のうち今回は後者のBLOGOSのアンケート結果について考察します。
(別の機会に1つめの記事についても考察する予定です)

このBLOGOSが行ったアンケートの結果、非常に興味深いものでした。
なぜなら次に示す別のアンケート結果では、8割以上の人がタバコに対して有害なイメージを持っているためです。

東急沿線アンケート調査データ AreaVoice[たばこに関するアンケート]|東京急行電鉄(株)セラン事務局

規制に反対と答えた方は、やはり「表現の自由」が大切とお考えだからでしょうか。
だとすればそれは前述の保健指導リソースガイドのリンクの中のWHOの試算のように、年間600万人もの人々を死に追いやっている物質に関するものでも守らなければならない、つまり人の命よりも大切な権利と考えていらっしゃるからということでしょうか。
(600万人と言えばナチスドイツのホロコーストによるユダヤ人の犠牲者数に匹敵するほどの恐ろしい数です)

ですが恐らく本当にそのように考えていらっしゃるわけではないと思います。

8割の人がタバコを健康に有害なものと考えている。そしてWHOの調査によれば37%の未成年が映画などの喫煙シーンをみたことがきっかけで、その有害なタバコを吸い始めたと回答したという因果関係を示すデータが存在している。しかも未成年の喫煙は法律違反である。
さらに8割という圧倒的な数字から推測して、その中には自分に子どもがいる親も相当数含まれており、そうした人には切実な問題であるはずである。
(先の東京急行電鉄のアンケート結果によれば、喫煙者の3割以上の人が未成年の段階から喫煙を開始しています)

ですから、もしタバコを健康に有害なものと考えている8割の人が、そのことを本当に深刻に受け止めていれば、表現の自由が大切だとはしても簡単には答えを出せないはずです。
しかしBLOGOSのアンケートでは「わからない」と答えた人は僅か5%です。

アンケート結果は人々の考えを表しているとは限らない

上述のようにBLOGOSと東京急行電鉄のアンケート結果は、タバコに関することを理詰めで考えていけば明らかに矛盾しているように、少なくても私には思えます。
このことからアンケート結果は必ずしもその人自身の考えを表しているとは限らないのではないかと考えました。

またこの2つのアンケート結果の解離は、恐らくは世間でタバコが有害と考えられているようだから私もそう思う、そして同じく最近「表現の自由」の大切さをよく聞くので私もそう思うというように、単に同調した結果に過ぎないのではないかと想定しています。

表現の自由をめぐる議論を法律論に終わらせることは危険では

以上のようにBLOGOSのアンケート結果は必ずしも参考にならず、またWHOや厚労省研究班が示しているように毎年多くの人の命を奪っているかもしれないタバコに関しては、法の精神に照らして、つまり「表現の自由」に関する法律論のみで判断することには疑問を感じます。

法律とはできるだけ多くの人が快適に暮らせるようにと人間自身が考え出した制度、つまり人間にとっては手段や道具のような存在であり、もし不利益が大きなものであれば変えて行く必要がある柔軟性を有しているものと私は考えています。
(これは言うまでもないことですが「だから従わなくても良い」という意味ではありません)

追伸)なお私自身タバコに関しては、写真家として昨年、上野の森美術館でタバコの受動喫煙の健康被害をテーマとした作品を発表しておりますように、喫煙行為を非常に問題視しております。
以下、その展示関連のリンクです。

美術館の展示で「受動喫煙の健康被害と喫煙の殺人的性格」をテーマにした作品制作を考えています

アートイマジン芸術祭「選抜展」終了。ご来場ありがとうございました
(展示作品に使用したテキストを掲載しています)

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