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隠れ自己愛的な人の極端な二面性の実例その1:媚を売るような態度〜自己愛講座41

要約:ナルシスト的な態度が表面化しづらい「隠れ自己愛」の人の特徴の1つとして、相手から好かれたいとの思いに心を奪われるあまり媚を売るような態度を取ってしまう傾向を、実例を交えながら解説しています。

今回は前々回の記事「隠れ自己愛の人は普段は優しく誠実そうな人に見えるので、ナルシスティックな人以上に巻き込まれやすい〜自己愛講座40」の実例を示したいと思います。
ただし巻き込み方ではなく、隠れ自己愛的な人の極端な二面性についてです。

相手から好かれたいとの思いに心を奪われるあまり、媚を売るような態度を取ってしまう人

非常に極端な二面性を有する隠れ自己愛的な人が見せる典型的なパターンは、ある人には媚を売るような態度を取り続ける一方で、別の人には見るからに尊大な態度を取るというものです。
このようなパターンが生じる要因は次のようなものではないかと考えられます。

自己愛講座1で示した自己愛性パーソナリティの定義にもありますように、自己愛的な人は他者からの肯定的な評価による自尊感情の維持に心を奪われる傾向があります。
したがって自己愛的な人には、他人から好かれようと、無理にでも相手のことを褒める傾向があります。

しかしそれが媚を売るような態度になってしまっては、その褒め言葉がお世辞としか受け取ってもらえず、その結果相手から好かれる可能性も低くなってしまうため、真の目的である肯定的なフィードバックも得られなくなってしまいます。

このように相手から好かれたいとの思いに心を奪われるあまり媚を売るような態度を取ってしまう人は、必死の努力も虚しく肯定的なフィードバックがほとんど得られないため自尊感情が高まりません。
むしろ無理していることで、かえってストレスが増大してしまいかねません。

こうして恒常的にストレスを抱え自尊心も低いままであることが、別の人への非常に尊大な態度となって表れるのではないかと考えられます。

肯定的なフィードバックの獲得に失敗してしまう人は自己中心性が強すぎる

このように肯定的なフィードバックの獲得に失敗してしまう人は、自己愛的な人の特徴の1つである自己中心性、つまり自分のことばかりに関心が集中するあまり、その自分の振る舞いが相手に与える影響にまで思考が及ばないからではないかと考えられます。

極端な二面性を有する人は「理想化-価値下げ」の防衛機制が強く働いている

ちなみに上述のような媚を売るような態度を取る人は、私の日常のテリトリーではギャラリーでよく見かけます。
具体的には、お気に入りのアーティストには媚を売る態度に終始する一方で、それ以外の人には、あからさまに尊大な態度を取ります。
なかには些細なことで怒鳴りつけるような人もいます。

ただ不思議に思うのは、そうした人の中にはギャラリースタッフにも尊大な態度を取る人がいることです。
よく行く場所なのですから、そこの関係者には愛想を良くした方が良さそうなものですが、そうではないのです。

例えば直前までお気に入りのアーティストに対して笑顔を見せていた人が、展示スペースから通路に出た途端、前を歩いていたスタッフに対して「邪魔だ、どけろ」と怒りを露わにした場面に遭遇したことがあります。
その僅か数秒の間に何か不快なことがあったとは考えられないため、こうした人は瞬時にモードが入れ替わることが分かります。

補足)カフェなどでも同様にして、非常に異なる態度を見せる人を時々見かけます。

このことから、特定の人以外には非常に尊大な態度を取る人には、平均以上に「理想化-価値下げ」の防衛機制が強く働いているのではないかと考えられます。
ある特定の人だけが極度に理想化され、それ以外のすべての人は存在する価値さえない人と見下されている状態です。

ですからこうした極端に異なる態度を取る人は、特定の人との二人だけの世界に生き、その人のことを暇なし空想している可能性があります。
このため決めつけにならぬよう言葉を慎重に選ばねばなりませんが、それでもその理想化のターゲットとなっている人は、ストーカー行為の兆しには十分注意した方が良いと個人的には思います。

次回は同じ隠れ自己愛的と思える人でも、一見非常に社交的に見える人の心理について考察する予定です。

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