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発達障害の、すべての問題の原因を脳の機能障害とする説への疑問

  • 2018年5月2日
  • 2021年11月19日
  • 発達障害
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昨日からウタ・フリス著『ウタ・フリスの自閉症入門』を読んでいます。
タイトルは自閉症となっていますが、自閉症スペクトラム全般を扱っているため、アスペルガー障害に関する記述もあります。

発達障害の、すべての問題の原因を脳の機能障害とする説への疑問

とは言え、いずれも専門外の領域を扱った同書を読み始めた直接のきっかけは、発達障害の原因として伝えられている情報への疑問です。
数日前にNHKで放送された「超実践!発達障害 困りごととのつきあい方」でも、番組に登場した専門家の方からその話が出ていましたが、発達障害の人が経験する困りごとは「すべて」脳の機能障害が原因とする説が有力視されているようです。

以下に述べるようなことは医療や支援の現場においても本当に通説とされているのか、もしかしたら情報の発信に偏りがあるのではないか、との疑問が第一人者の一人と考えられるウタ・フリスの著書を読み始めた理由です。

注)専門外ゆえ、以下の記述は参考程度にご覧ください。

発達障害の概念では、当事者も養育者も「何も悪くない」点が強調されている

私が疑問を感じるのは、この説を援用して「だから当事者の人は何も悪くない」点が強調されていることです。
具体的には次のようなニュアンスが含まれていると考えられます。

・すべての原因は脳の機能障害にあるため、たとえどのようなことが生じたとしても、発達障害の人には一切非はない。
・同様の理由から、養育者の養育態度にも一切問題はない。

脳の機能障害の影響を拡張する二次障害という考え方

また発達障害に関しては、当事者の人には何ら問題がないことを後押しするための概念がもう1つ存在します。それが二次障害という考え方です。

二次障害とは、発達障害の人が周囲の障害に理解のない人からの配慮を欠いた態度によって深く傷つき、そのことが原因で他の精神疾患まで発症してしまうことを指します。
またその精神疾患には、うつ病などの気分障害や、不安障害、パーソナリティ障害など、およそあらゆる精神疾患に罹患する可能性が示唆されています。

さらにそれらの精神疾患を発症してしまった場合でも、その原因は専ら周囲の人の発達障害への無理解からくる態度にあり、当事者の人には一切非はないと考えられています。
また原因が専ら発達障害への無理解にあるということは、裏を返せば周囲の人にその知識さえあれば、あるいはそもそも脳の機能障害さえ存在しなければ決して生じ得ないということになるのではないかと考えられます。

人間である以上、誰もが「不完全な存在」であるはず

ですがこの世に心理的に何の問題もない完璧な人間など存在するでしょうか。
誰もが少なからず好ましくない部分を持っていて、そのことで不利益を被ったり、時には他人を傷つけてしまったことがあるのではないでしょうか。

子育てについても同様です。NHKの「すくすく子育て」に登場する専門家の方々も仰っていますように、子育てには大雑把な指針のようなものはあっても、これさえ実践すれば必ず上手くいくというような正解あるいは成功法というものは存在せず、そのためどうしても試行錯誤が必要となります。

また試行錯誤が必要ということは、失敗は避けられないため、その失敗から徐々に学んでいくしかないことをも意味しています。

「何も悪くない」旨の見解は、元々は自己批判の激しい人へ向けられたメッセージ

私の知る限り、発達障害に関する「当事者の人も養育者も何も悪くない」旨の見解は、元々は原因も分からず苦しみ続けることで自己批判が激しくなってしまった人に対して、過剰な罪悪感を和らげるために発せられたもののようです。
つまり考え方のバランスをとることを目的としたメッセージです。

ところがいつしかその目的が省略される形でこの見解が広まるようになった結果、今では免罪符のような働きを持つようになってしまったのではないかと考えられます。

誰もが人間であるがゆえに少なからず好ましくない部分を持っていて、それはどんなに努力しても完全になくせるものではないということが受容されれば「何も悪くない」という前提までは必要ないように思えるのです。

追伸)また私が「何も悪くない」という見解に疑問を感じるのは、そうした極端な発想は有害な影響を与えかねないと考えているためでもあります。

補足)子育てについて「何も問題はない」とする見解は2つの意味で使われている

記事作成後に見落としていたことがあるのに気づきましたので、その点を補足します。
それは小見出しにもありますように、子育てについて「何も問題はない」とする見解は2つの意味で使われているということです。

子育ての仕方は発達障害の原因ではないとの意味合い

1つめは発達障害に関して当初から言われていたことですが、発達障害が生得的な要因で発生するものと考えられることから、子育ての仕方が影響しているわけではない、つまりそれが原因で発生するものではないという意味合いです。

トラブルの原因はすべて脳の機能障害と二次障害が原因ゆえ、子育てには何も問題はないとの意味合い

2つめはこれまで取り上げてきた、トラブルの原因はすべて脳の機能障害と二次障害が原因なのだから、子育てには何も問題はないとの意味合いです。

1つめの見解は今読み進めている『ウタ・フリスの自閉症入門』にも同様のことが書かれていますので、発達障害が生得的な要因で生じるものとの見解は多くの国で共有されているもののようです。

ところが2つめの見解は、今のところ同書に出てきていません。
ですからこの考えは日本独自の推論の可能性があります。
(この点は同書を読み終えてから、結果を改めて報告致します)

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