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熱しやすく冷めやすい飽きっぽい性格~自己愛講座27

要約:自己愛性パーソナリティの人が多用する「理想化-価値下げ」の防衛規制が、物事を現実以上に魅力的に感じさせたり、あるいは逆につまらないもの思わせたりする作用をもたらし、これが何事にも熱しやすく冷めやすい飽きっぽい性格につながると考えられます。

前回の「空虚感から意識を逸らすために常に何かしていないと落ち着かない~自己愛講座26」の中で、自己愛的な人はストレスを避けるために「とにかく何でも良いから、何かしていないと落ち着かない」旨のことを書きましたが、これはあくまで解釈で、実際に自覚される感覚は必ずしも「とにかく何でも良いから」とは限らず、むしろ特定のことに興味が、しかし急に湧くケースもあります。
そしてこれが今回述べる飽きっぽい性格の一因となっていると考えられます。

なお、今回の内容は主に回避性パーソナリティ障害の診断項目が当てはまるような抑うつ型の自己愛性パーソナリティの人に言えることで、自己愛性パーソナリティ障害の診断項目が当てはまる誇大型の人には的外れなケースが多々あります。

急に「生き甲斐」を見つけた感覚に襲われる

私自身もかつて頻繁に経験したことですが、特に抑うつ型の自己愛性パーソナリティの人は、あるとき急に特定の事柄に無性に興味が湧くことがあります。
しかもその関心の度合いは非常に強く、ちょうど前回の記事の「とにかく何でも良いからしていたい」状態と同じような、居ても立っても居られない感覚に襲われることも少なくないため、多少お金がかかるようなものであっても、検討するまもなく飛びつき、それに没頭することが少なくありません。

これは今までの不満足な人生をすべて帳消しにくれるほどの力を持つ、長い間探し求めていた生き甲斐をとうとう見つけたような感覚に襲われるためです。

趣味がすぐに「天職」へと昇華する

しかもその関心事は趣味の段階をすぐに通り越して天職へと昇華するため、そのための先行投資を惜しまない人も少なくありません。
これは既に述べましたように、いずれ近いうちにこれまでの辛い人生をすべて帳消しにくれるほどのバラ色の人生が待っているのですから、今はどんなにお金がかかったとしても十分に元が取れように思えるためです。

耐え難いほど憂鬱な気分の時には「理想化-価値下げ」の働きにより、関心事が天職にまで高められる

これらのあるとき急に特定の事柄に無性に興味が湧き、それが瞬く間に天職にまで価値が高められてしまうことも、私の専門の自己愛の心理の働きによるものと考えられます。
加えて今回のような非常に極端なケースに陥るのは、前回述べた空虚感の前駆症状である「何もすることが無くて落ち着かなくなる」状態よりもさらに深刻な、耐え難いほどの憂鬱な気分の状態にある時と想定されます。

以前に「理想化-価値下げ」の防衛機制が自己愛的な症状を生み出す~自己愛講座8にも書きましたように、誇大型、抑うつ型の違いを問わず、自己愛的な性格傾向の人は「理想化-価値下げ」と呼ばれる防衛機制の働きにより、常に自分を他人と比較し、どちらが優れているのかということに非常にナーバスになっていますので、自分が憂鬱な気分の状態にある時には、その対比として必然的に誰かや何かが過度に理想化されることになります。

しかもその憂鬱な気分が深刻であればあるほど、そのような危機的な状態にある自分をすぐにでも救い出してくれる存在を必要としますので、その理想化はますます激しいものとなります。
この救世主願望の働きにより、これまで多少興味があった程度のことが急に素晴らしいものに思えて来て、さらにそれが天職にまで高められてしまうのではないかと考えられます。

憂鬱な気分の解消に伴い、救世主役の関心事は用済みとなる

しかしその関心事も下駄を履かされたゆえに高い価値を有していたに過ぎません。
そのため生き甲斐を見つけた喜びにより憂鬱な気分が解消するに伴い、その救世主役とされていた関心事は用済みとなり、下駄を外され元の評価に逆戻りしてしまいます。
これが特に抑うつ型の自己愛的な人の、熱しやすく冷めやすい飽きっぽい性格を生み出しているのではないかと考えられます。

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