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傾聴スキル・共感能力を高める練習のヒントとなった本の文章:

『ナラティブ・セラピー-社会構成主義の実践』という本によれば、ミラノ派の家族療法家のギアンフランコ・チキンという方は、心理カウンセリング(この場合、家族療法)のトレーニング中の学生に対して「普段からできるだけ多くの仮説*とストーリー**を考え、その中から一番ピッタリとくる仮説・ストーリーをクライエントに伝える」ように指導しているそうです。
*クライエントの心理状態を説明するための解釈
**交流分析における人生脚本や、精神分析・認知行動療法における意識的・無意識的な信念に相当

このギアンフランコ・チキンの実践するトレーニング方法は、直接的には家族療法のトレーニングについてのものですが、この方法はそのまま家族療法以外の心理療法を用いる心理カウンセラーの方の傾聴スキルや共感能力を高める練習にも使えるように思えます。

心理カウンセリングにおける傾聴・共感能力の実際:

傾聴においては、あたかもクライエントが感じると同じように感じる、いわゆる共感と呼ばれる能力が必要とされますが、現実的には共感と同情との違いは自己開示か否かの違い-クライエント中心療法・自己心理学における傾聴でも述べましたように、所詮他人である心理カウンセラーにクライエントの心の中を覗いたり、心の中に入り込んだりすることなどできるはずもありません。
そのため実際の心理カウンセリングで傾聴する際には、クライエントの身になって(立場に立って)感じたり考えたりすることが共感と呼べる作業に相当することになります。

ひとりでできる傾聴スキル・共感能力を高める練習方法:

この傾聴ないし共感の定義と先のギアンフランコ・チキンによる社会構成主義的な家族療法のトレーニング方法とを考え合わせますと、次のような方法が傾聴スキルや共感能力を高める練習として有効だと考えられます。
1. 家族や会社の人、あるいは知人の「どう考えても理解不能な言動」を思い浮かべる。
2. その「理解不能な言動」に対して、相手の方の身になって(立場に立って)、相手の方にとっては当然と思えるような理由を無理矢理にでも考える。
(どんなに支離滅裂と思えるような考えでもかまいません)
3. 2の作業を思いつく限り行う。
この練習で大切なのは「相手の方の身になって(立場に立って)」の部分です。自分の立場から考えたのでは評論家のような解釈になってしまい、それは共感ではありません。あくまで相手の立場で考えるのが共感の基本です。

ひとりでできる傾聴スキル・共感能力を高める練習方法のメリット:

なお上述の傾聴スキル・共感能力を高める練習方法はひとりでできる点も大きなメリットです。
なぜなら一般的な傾聴の練習ではマンツーマンないしはグループでカウンセリングルームや公共施設などを借り切って行われますが、このような練習方法では時間的・経済的な負担に加えてお互いのモチベーションが大きく影響します。
つまり練習メンバー全員が高いモチベーションを保ち続けない限り、練習の継続は難しいと言わざるを得ません。
例を挙げますと、私はこれまで傾聴や共感のみならずフォーカシングプロセス指向心理学(プロセスワーク)など他の心理療法の勉強会の参加してきましたが、いずれの心理療法の勉強会も数年のうちに「すべて」解散あるいは自然消滅してしまっています。
この例からもパートナーと、あるいはグループで行う心理療法の練習がいかに難しいものであるかを物語っているように思えます。

自由連想法による自己分析でも高められる傾聴スキル・共感能力:

フロイトが心理治療に用いた自由連想法を使って自己分析を行うことも、上述の傾聴スキル・共感能力を高める練習になり得ます。
自由連想法による自己分析とは、意識に上ってきた思考・感情・記憶などをすべて言語化することで自己洞察を深めることを目的とした心理療法ですが、私自身の自己分析(抑うつ型自己愛性人格の心理カウンセラーの自己分析・自己治療の記録)をご覧いただくと分かりますように、頻繁に対人関係についての自由連想が生じ、その際相手の方の気持ちや考えに思いをめぐらすことも少なくありません。
したがって自由連想法による自己分析では、特に意識することなく上述の傾聴スキルや共感能力を高める練習を行っていることも間々あります。
もっとも最初からテーマを対人関係に絞って自由連想法を行えば、より効率的に傾聴スキルや共感能力を高める練習となることは言うまでもありません。

傾聴スキル・共感能力を高めるセミナー・個人レッスンのご案内:

最後に私事で恐縮ですが、傾聴に不可欠な共感能力を高める効果が期待できると思われるセミナー・個人レッスンをご案内させていただきます。

自己分析個人レッスン
自己分析セミナー
精神分析の自由連想法を利用して自己受容能力を高める自己分析の個人レッスン・セミナーです。
ゲシュタルト療法による自己傾聴 個人レッスン
ゲシュタルト療法による自己傾聴セミナー

自己傾聴とは造語ですが、イメージ療法の一つであるゲシュタルト療法の技法を使って文字通り自分自身に対して心理カウンセラーのように傾聴する技法です。自己分析よりもさらに高い自己受容効果が期待できます☆

ひとりでできる傾聴・共感能力を高める練習 参考文献:

マイケル・ホワイト著、ハロルド・グーリシャン著『ナラティブ・セラピー-社会構成主義の実践』、遠見書房; 復刊版、2014年
社会構成主義や家族療法の著名な心理療法家が、それぞれに他の心理療法から社会構成主義へと考え方を変えるに到ったプロセスについて述べた本です。
そのため私のように「なぜそのような理論になるのか?」といちいち疑問に思うような人には、その理由が述べられているため、ときに共感しながら読み進められる本だと思います。
その反面「社会構成主義やナラティブセラピーを勉強したい」方にはコメント欄で「散文」と酷評されていますように、決して体系だって記述されているわけではありませんので、後述の社会構成主義やナラティブセラピーの解説本の方が役に立つはずです。
(私も社会構成主義やナラティブセラピーの理論を実際の心理カウンセリングや夢分析に取り入れるための補完として『物語りとしての心理療法-ナラティブセラピーの魅力』を合わせて購入しました)

社会構成主義 解説本リスト
ナラティブセラピー解説本リスト

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