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個人の自由や権利を最大限に尊重する社会の風潮への懸念

今朝5月18日(月)の8時15分から放送されるNHK「あさイチ」のテーマはキレる子どもです。
“キレる”子ども どう接する?|NHK あさイチ

個人の自由や権利を最大限に尊重する価値観の台頭

直接の原因ではないかもしれませんが、また子どもに限らずキレる人が増えて来ているように思えることに関しては、最近マスメディアで頻繁に聞かれるようになった、次のような価値観が影響しているように思えます。

・個人の自由や権利の最大限の尊重
・我慢しなくていい
・ありのままに生きることの奨励

一見どれも個人の人権を最大限に尊重したとても素晴らしい考え方のように思えます。
ですがもし誰もが欲求の赴くままに自由に生きることが当然の権利として許され、また何か不満なことがあっても我慢しなくても良いのだとすれば、至るところで利害の衝突が起きてしまうはずです。

驚くべきは、これらの考えが、いかにも自己中心的な人の主張ではなく、私のような心理職であったり、あるいは様々な支援団体のような、いわゆる専門家の見解としてマスメディアから頻繁に発信されていることです。
そして上述のような価値観が広まれば、私の予想とは異なり誰もが幸せになれるという考えが同様によく聞かれます。

根底に存在する完全な性善説

恐らくこうした考えをお持ちの専門家の方は、ロジャーリアンの方がそうであるように性善説を信じることができる方々なのだと思います。
(ロジャーズは著書の中で「有能な心理療法家の第二の資質は、子どもの完全性を真に尊重することである」と述べています)

この世に悪い人など一人もいない。だから本能であるその人の善性が制約を受けることなく発現することこそが個人だけでなく社会全体の幸福につながるという考えなのだと思います。
ですが私が精神分析という主に病理に焦点を当てた心理療法の方が腑に落ちる性分のためでしょうか、それは理想に過ぎないように思えます。

個人の自由や権利の最大限の尊重は社会のニーズでもある

ただこれらの考えが多くの人々の間で共感的に受け入れられるようになって来ているということは、専門家の方々の見解は人々のニーズの反映でもあるという点も忘れてはなりません。
つまりこの流れは今後も多くの人々の共感を呼び、ますます加速して行く可能性が高いということです。

参考文献

C.R.ロジャーズ著『カウンセリングと心理療法-実践のための新しい概念(ロジャーズ主要著作集1)』、岩崎学術出版社、2005年

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