前回「「意識高い系」彼氏のお説教やダメ出しが延々と続く理由~自己愛講座16」旨の記事を投稿しましたが、今回はそのような振る舞いをする方の2つのタイプ分けと、それぞれの特徴について書かせていただきます。
タイプその1~重症域の誇大型の自己愛タイプの人
時には何時間も同じようなことを繰り返し繰り返し説き続ける人のタイプの一つめは、DSM*の自己愛性パーソナリティ障害の診断項目の多くが当てはまるような、いわゆるナルシスティックな印象を与える人で、これまでの自己愛講座で誇大型の自己愛タイプと呼称してきた方に該当します。
ただしそのような人がすべて、身近な人に対してお説教やダメ出しを延々と続けるわけではありません。
*DSM~「精神障害の診断と統計マニュアル」と訳される、アメリカ精神医学会が作成した精神疾患の診断マニュアル。
誇大型の自己愛タイプの人の特徴
前回の記事で書きましたように、お説教やダメ出しを延々と続けるのは、そうすることで相手に対して優越感を感じ、そのことで自尊心を回復させるためと考えられているため、行為が行われる直前までは自尊心が非常に損なわれているという前提条件が必要となります。
ですが誇大型の自己愛タイプの人は『パーソナリティ障害の診断と治療』でアメリカの経営者が典型例として挙げられていますように、仕事上非常に有能で、ビジネスで成功を収めている人が少なくありません。
ですからこのタイプの人は、ときに誇大妄想と思えるほど常に自信に溢れているため、そのビジネスで致命的な失敗でも犯さない限り、簡単には自尊心が回復しないほどの深刻な抑うつ状態に陥ることはないはずです。
このように考えますと、誇大型の自己愛タイプの人が身近な人に対してお説教やダメ出しを延々と続ける事態に陥るのは、誇大感があまりに強すぎるために人間関係を大きく損ない、その結果ビジネスその他の活動で思うような結果が出せないような人であるか、あるいは傍から目れば十分に成功を収めているように見えても、理想が高すぎるために満足感を得られないような人に限られると思われます。
また誇大型の自己愛タイプの人にとって何より大事なのは仕事でしょうから、そうした人は他人に長々とお説教をするよりも仕事に没頭したいと考えるはずです。
ですから可能性としてこのタイプの人のケースを提示しましたが、実際に起り得る可能性は非常に低いと考えられます。
タイプその2~抑うつ型の自己愛タイプの人
身近な人に対してお説教やダメ出しを延々と続ける人の2つめのタイプは、これまでの自己愛講座で抑うつ型の自己愛と呼称してきた人で、DSMで言えば回避性パーソナリティ障害の診断項目の多くが当てはまるような人です。
回避性パーソナリティ障害とはネットで調べていただくと分かりますが、一言で言えば対人恐怖症的な症状を呈する精神疾患です。
恐らく日本では、この抑うつ型の自己愛タイプの人が、お説教やダメ出しが延々と続ける人の大部分を占めている思われます。
その理由はカフェなどで延々とお説教やダメ出しを繰り返すほとんどの人が、次のような印象を受けるためです。
・生気が感じられない
・表情が暗く、かつ堅い、あるいは無表情
・それゆえ感情が感じられない
・あるいは不安や緊張が見て取れる
これらの特徴は対人恐怖症的な人に顕著に見られるものばかりです。
抑うつ型の自己愛タイプの人の特徴
説明を省いてしまいましたが、前述の誇大型の自己愛タイプで生じる誇大感は、それがなければ自分には何の価値もないと感じ深刻な抑うつ状態に陥ってしまうことを防ぐために生じる根拠のない自信のようなものです。
そして、その働きによって誇大型の自己愛タイプの人は、深刻な抑うつ状態を免れることができているわけです。
もっともその自信が根拠に乏しいわけですから失敗することも多いのですが、それでも心理的な防衛の働きによって並々ならぬ自信が維持されることも多いため、その自信がチャレンジ精神を生み、ビジネスなどに好影響を与えているのではないかと思われます。
対して抑うつ型の自己愛タイプの人は、その防衛力が非常に弱いためにしばしば深刻な抑うつ状態に直面してしまい、その結果常に自身がない、つまり自尊心が損なわれた状態に陥りがちになります。
しかしそれではあまりに辛すぎ生きていけませんので、誇大型の自己愛タイプの人の多くが少なからず手にするビジネスその他の成功から得られる自信とは別のことによって、深刻な抑うつ状態を免れる必要性が生じます。
その手段の一つが、誰か他人を徹底的に見下すことで相対的に自分の存在価値の高まりを感じる、またそうして他人を屈服させるだけの力が自分にはあるという意味での(健全とは言い難い)自己効力感も感じることができる。
しかしこうした行為も、知り合い程度の人よりも身近な人あるいは自分よりも立場が低いと思われる人に対しての方が遥かに行いやすい、これは「この人なら大目に見てもらえるだろう」という甘えが生じたり、相手に反撃される可能性が低いことがその理由ですが、こうして親密な間柄の人ほどターゲットになりやすいのではないかと考えられます。
※ただし重症域の自己愛障害の方ほどストレス耐性を欠き心理的な余裕も無くなることから、即座に精神的苦痛を取り除くために非常に多くの人を巻き込むようになります。
次回はこの問題に対する当事者の方々からの対処法のご要望が多いため、圧倒的多数を占めると思われる抑うつ型の自己愛タイプの人との間に生じるケースを詳述しつつ、対処法や注意点も提示できればと考えています。
追伸)今回のケースは「意識高い系」の方ではなかった可能性が高い
前回の記事の冒頭で、男性の方の「もっと志の高い人間になって欲しい」旨の発言を受けて「意識高い系」の典型的な人と結論付けてしまいましたが、その結論は今回の考察内容と矛盾しているように思えます。
なぜなら「意識高い系」と呼ばれる人の特徴は、自己顕示欲が強く自信に溢れた、つまり誇大型の自己愛タイプのような人と考えられるためです。
ですから私が拝見したのは、普段は抑うつ的な状態にある人が、たまたま彼女を価値下げすることで自尊心を回復した時に見せた一時的な顔だったのではないかと考えられます。
そのように考えるのは、その男性からは誇大型の自己愛タイプの人に顕著なはずの旺盛な自己顕示欲や、あからさまな尊大さなどが感じられなかったためです。
今更ながらですが、訂正してお詫び致します。