タイトルどおり「セラピスト-クライエント関係」と呼ばれる、セラピーにおける「関係性」について、4人の著名なセラピストの理論を元に書かれた本です。
著者も「セラピスト以外の人にも読んで欲しい」と書いているように、それぞれの理論の専門書に比べて、かなり平素な内容です。
特に「ロジャーズ派」の方にお勧めさせていただきます。
その理由はこの本の6ページにも端的に書かれていますように、ロジャーズ派をはじめとした人間性心理学に分類される心理療法のトレーニングにおいては「セラピスト-クライエント関係」を直接学ぶ機会がほとんどないためです。
意外に思われるかもしれませんが、例えばロジャーズの提唱した「共感」「無条件の肯定的配慮」「純粋性」はいずれもセラピストに必要な態度を示したものであり、これはセラピストとクライエントとの間に生じることについて述べたものではありません。
私見ですが、これはロジャーズの理論が「セラピストのどのような態度や行動がセラピーに治療的な効果をもたらすのか」という観点の実証研究から生まれものであり、すなわちロジャーズの関心が最初から「セラピスト-クライエント関係」よりも「セラピストの態度」にあったことがその理由ではないかと思われます。
一方、分析的なセラピーの一つである精神分析で用いられる「転移」「投影性同一視」などはいずれもセラピストとクライエントとの間に生じていることに関しての仮説です。
また精神分析の最前線とも言えるストロロウの間主観的アプローチやダニエル・スターンのアプローチは、セラピスト-クライエント関係そのものが理論の中核をなしています。
このように精神分析では創設者のフロイトの時代から「セラピスト-クライエント関係」は常に重要なテーマと考えられてきました。
以上が今回紹介した「セラピストとクライエント-フロイト、ロジャーズ、ギル、コフートの統合」を特にロジャーズ派の方にお勧めさせていただく理由です。