2ページめ目次:
ジェンダーバイアスを作り出す男性とその被害者の女性という記事構成
ジェンダーバイアスの実態は、問題意識の低い男性により形成・維持されるという単純な構図ではない
皮肉にも正義感が勧善懲悪の世界観を演出してしまう
組織が同質化していては、他人を介したバイアスの是正機能が有効に働かない
ジェンダーバイアスについて考察する記事。1ページ目では、ジェンダーそのものの概念も含めて問題となっていることを概観しました。
このページでは、1ページでも参照したYahoo!ニュースの記事を例に、ジェンダーに関する論説は、よほど注意しない限り新たな偏見を生み出してしまいかねないことを示したいと思います。
補足) 執筆者の方には大変申し訳ございませんが、具体例があった方が分かりやすいと考え、題材として使わせていただきました。
ジェンダーバイアスを作り出す男性とその被害者の女性という記事構成
まず改めて参照記事へのリンクを掲載致します。
一斉休校、報じるメディアのジェンダーバイアスも課題ーダイバーシティなき「同質性のリスク」(白河桃子) – 個人 – Yahoo!ニュース
私がこの記事を読んで感じたことの1つは、ジェンダーバイアスについて少なからず問題意識を持っていたはずなのに、マスメディアの報道内容に対してその問題点を見抜けなかったことへのショックです。
そしてもう1つは、もしジェンダーバイアスについてまったく予備知識がない人がこの記事を読むと、もしかしたら偏見を持ってしまうのではないかという危惧です。
この記事では一斉休校の報道の仕方の問題点を指摘した後に、報道の現場に蔓延するジェンダーバイアスを取り上げ、その深刻さを示す例として、ある女性がバイアスを問題視しても上層部から聞く耳を持ってもらえなかったことが挙げられています。
そしてその後に、ジェンダーバイアスを生み出す構造的な問題点として、意思決定権限を有する人の割合に関する男女比の圧倒的なアンバランスの存在が指摘されています。
さらにメディアのジェンダーバイアスに満ちた報道の悪影響を示すものとして、男性の子育てへの無関心さを示す発言などが紹介されています。
このように参照記事はジェンダーバイアスを作り出している男性とその被害者の女性という一貫した構成になっていますが、このような内容の記事をジェンダーの予備知識がない人が読んだ場合、女性の心中に男性一般に対する敵意が生じる恐れがあるように思えました。
なぜならこの記事の中では一貫して、男性が問題を作り出しそれを維持する側として描かれているためです。
ジェンダーバイアスの実態は、問題意識の低い男性により形成・維持されるという単純な構図ではない
しかし私が知る限り、ジェンダーバイアスの実態はこれほど単純ではありません。
おそらく実数は女性より遥かに少ないでしょうが、男性の中にもジェンダーバイアスの問題に関心を寄せたり、あるいはその是正に取り組む人がいて、その中には国会議員も含まれています。
そして意外に思われるかもしれませんが、実は女性の中にもジェンダーに関する現状を積極的に肯定するような人が少なからずいます。
このため私も最初は驚きましたが、ネット上でジェンダーバイアスの存在などを問題視する発言をすると、男性だけでなく女性からも批判を受けることが少なくありません。
皮肉にも正義感が勧善懲悪の世界観を演出してしまう
今回参照した記事は、男性に対する敵意がにじみ出ているようなものではなく、もっと穏やかな論調です。
しかしそれでもジェンダーバイアスの存在を問題視する女性と、それに無理解な男性という画一的な構図では、社会はそのような形で二分されているとの印象を与え、これではダイバーシティを推進するどころか、むしろ社会に憎悪や分断をもたらし兼ねないでしょう。
このような画一的な構図になってしまう一因として、社会問題を論じる際の正義感の影響を挙げることができます。
正義感という言葉は、一般的にはポジティブな文脈で使われることがほとんどですが、この感覚には周囲や社会で好ましくない事態が生じていることに対して憤りを感じ、それを是正したいとの思いが含まれているように思えます。
そしてその憤りの片鱗が、どれほど自制しても言動に現れてしまうのではないかと考えられます。
補足) 憤りとは大げさに聞こえるかもしれませんが、それほどの強い怒りを感じるからこそ、何としてもそれを変えねばという動機が生じると私は考えています。
今回の例で言えば、ジェンダーバイアスの存在を問題視すればするほど、その問題の主犯格と想定されている男性へのネガティヴな感情も増大され、そしてそのネガティヴな感情の影響を受けて、男性を実体以上に悪しき存在として描いてしまうことになります。
組織が同質化していては、他人を介したバイアスの是正機能が有効に働かない
さらに重要なのは、正義感が生み出すバイアスによって、自分の論述内容が勧善懲悪の世界に陥ってしまっていることに気づくことが難しい点です。
このような論者自身では気づくことが困難なバイアスを是正するためには、他人に読んでもらうことが有効になります。
しかしその他人を介したバイアスの是正機能も、同じような価値観の人ばかりが集まり組織が同質化していては効果が半減してしまいます。
したがってこの点からも、参照記事で指摘されているようにジェンダーバランスを適切に保つことは非常に有益と考えられます。
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