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NHKスペシャル「半グレ 反社会勢力の実像」を罪悪感・羞恥心・損得勘定・共感能力から考察~自己愛講座51

NHKスペシャル「半グレ 反社会勢力の実像」の内容を元に、犯罪心理を考察する記事。1ページ目では総論として、人間が犯罪を犯す要因や犯罪抑止力について考察しました。
2ページ以降では反社会性パーソナリティと自己愛性パーソナリティという2つの性格タイプと犯罪との関係を探って行きます。

反社会性パーソナリティと自己愛性パーソナリティの共通点と相違点

まずはじめに2つの性格タイプの共通点と相違点について触れておきます。

反社会性パーソナリティと自己愛性パーソナリティの共通点~罪悪感が欠如

両性格タイプの共通点は、罪悪感が欠如しているように感じられることです。この点について精神分析的なパーソナリティ理論では、実際にその感覚が乏しいと想定されていますが、同時に欠如の仕方には大きな違いがあると考えられています。

反社会性パーソナリティの人は、法律を守ることに対してまったく関心がないかのように見える

まず反社会性パーソナリティについてですが、このタイプの人の罪悪感に関する印象は「微塵も感じられない」という極端なものであり、さらにそれについて「気にも留めていない」、つまり法律を守ることに対してまったく関心がないかのように見えることです。

ちなみに『パーソナリティ障害の診断と治療』では、反社会性パーソナリティのこのような印象を「良心が欠如」「恥を知らない」と称しています。

独善的な正義感に燃えている自己愛的な人

対して自己愛性パーソナリティの人は、罪悪感が非常に乏しい点は同じでも、そのことに対する自己認識が大きく異なります。

意外に思われるかもしれませんが、反社会性パーソナリティの人は良心が欠如していると想定されているのに対して、自己愛性パーソナリティの人の多くはむしろ正義感が強く善人でありたい、また他人からそのような人間と思われたいと願っている人が少なくありません。
したがって自己愛性パーソナリティの人の第一印象は誠実な人間であることも珍しくありません。
これは自己愛講座1でも触れましたように、自己愛性パーソナリティの人にとって最も重要な事柄が、他人からの肯定的な評価により自尊心の高まりを感じることであるため、その目的を遂行するために、できるだけ好印象を持たれるように振る舞うことが習慣づいているためと考えられます。

しかしそれにも関わらず罪悪感の欠如が疑われるのは、自己愛性パーソナリティの人の価値基準が独り善がりであるケースが多いため社会のニーズとかけ離れてしまい、結果的に独善的な正義感を振りかざしているに過ぎないとみなされてしまうためです。

また犯罪に関して言えば、自己愛性パーソナリティの人は反社会性パーソナリティの人のように平気で罪を犯すようなことはありませんが、それでも倫理観が独善的であるために自己正当化された理屈でもって犯罪を犯してしまうことは起こり得ます。
また法律に抵触しないまでも、他人に対して非情な振る舞いをしてしまうことも、同じ文脈から生じます。

補足) 但しこのような自己愛性パーソナリティの人の負の心の側面は、通常はひた隠しにされており、甘えが生じる家族や親しい間柄、および仕事の同僚などの付き合いの長い人々しか知り得ません。

以上のように、その人のことをよく知る身近な人から見れば罪悪感が欠如した非常に自己中心的な人物のように見えても、当の本人は時に聖人レベルの人格者になりたいと願っているなど、内心と他者評価との間に非常に大きなギャップがあることが、反社会性パーソナリティとの違いです。

罪悪感(良心)と羞恥心を共に欠いていると想定される反社会性パーソナリティ

前述のように、反社会性パーソナリティの人と自己愛性パーソナリティの人は、共に罪悪感を欠いていながらも、内面は大きく異なっています。
しかしこのこと以上に両者で大きく異なるのが恥の感覚の有無です。

前述のように反社会性パーソナリティの人が「恥を知らない」のに対して、自己愛性パーソナリティの人はむしろ恥の感覚に非常に敏感で、その恐ろしい状況を避けるために毎日多くの時間を費やしています。

1ページ目で犯罪の抑止力が期待できる要素として第一に罪悪感(良心)を、次いで羞恥心(恥の感覚)を挙げましたが、この点に関して両パーソナリティを比較すると、自己愛性パーソナリティの人には罪悪感は期待できなくても、ひときわ強い羞恥心による抑止力は大いに期待できます。
なぜなら前述のように自己愛性パーソナリティの人には、内心では善良な人間になりたい、かつそのような人間と思われたいとの強い願望があるため、もし犯罪を犯してしまえばその評価が地に堕ちてしまうためです。

対して反社会性パーソナリティの人には、その羞恥心による抑止力さえ期待できないため、次回3ページ目で触れる予定の衝動性も相まって、最も犯罪を犯しやすい性格タイプと考えられています。
『パーソナリティ障害の診断と治療』の「反社会性パーソナリティ」の章によれば、アメリカの刑務所に収監されている囚人の8割が、この反社会性パーソナリティと想定されているそうです。

以上のように反社会性パーソナリティは、自己愛性パーソナリティと比べても、犯罪に結びつくような欲求を抑制する力が非常に弱いため、犯罪者の大部分がこのパーソナリティの人間になっていると想定されていますが、次のページでは反社会性パーソナリティの人の犯罪を犯すリスクを高めてしまう更なる要因について考察する予定です。

参考文献

ナンシー・マックウィリアムズ著『パーソナリティ障害の診断と治療』、創元社、2005年

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