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「クローズアップ現代+」の精密抗体検査の特集内容に、バッシングを助長する懸念

今回の記事は、一昨日のNHK総合「クローズアップ現代+ 第2波への備えとなるか“精密抗体検査”」を見た際に感じた懸念事項についてです。

目次:
新型コロナウイルスの精密抗体検査とその目的
すでにバッシングが存在しているにもかかわらず、さらに別の感染しやすい職種を安易に公表
「感染対策」至上主義の表れ
感染リスクとバッシングとは別次元の問題との認識

新型コロナウイルスの精密抗体検査とその目的

番組によれば精密抗体検査とは、可能な限り精度の高い手法で実施される抗体検査のことです。
そしてこの精密抗体検査を新型コロナウイルスに対して大規模に行うことで、感染の実態をできるだけ正確に把握し感染の第2波に備えることがその目的のようです。

すでにバッシングが存在しているにもかかわらず、さらに別の感染しやすい職種を安易に公表

この精密抗体検査の中で私が強い懸念を抱いたのは、検査目的の中に感染しやすい職種の把握が含まれており、しかもその検査の結果新たに判明した職種が番組で明らかにされていたことです。

同じく番組によれば、この目的はターゲットを絞り込むことでより効果的な対応策が打ち出せると考えられているからのようです。

しかし以前に「新型コロナウイルスの特性に反して、特定の職種からの感染のみを極度に恐れる心理の考察」でも取り上げましたように、新型コロナウイルス感染症に関しては、感染リスクが高いと想定されている一部の職種の人々に対して、いわれのないバッシングが続いています。

このため、こうした状況の中でさらに感染しやすい職種を突き止め公表すれば、これまで以上にバッシングの流れが大きくなってしまう恐れがあります。

「感染対策」至上主義の表れ

それにもかかわらず番組内で安易に感染しやすい職種が公表されてしまったのは、おそらく番組の当事者の関心が感染リスクにばかり向いてしまっていたからではないかと推測されます。

番組では冒頭に「精密抗体検査に期待されることと課題を検証する」旨の趣旨が述べられていました。
しかしその課題の部分に関しては「この検査だけで感染の実態を把握できるのか」という懸念が表明されただけで、前述のバッシングを含めた個人や社会への影響が考慮されることは最後までありませんでした。

感染リスクとバッシングとは別次元の問題との認識

もっとも「クローズアップ現代+」では、以前に一部の職種の人々に対するバッシングが取り上げられていました。しかもわずか6日前にです。
クローズアップ現代+「新型コロナ バッシングからの再起」

ですからバッシングの存在を知らないはずはないでしょう。

それにもかかわらず今回バッシングを助長しかねない情報を安易に流してしまった一つの要因として、今回と6日前の放送を別の問題を扱ったものと認識している可能性が考えられます。

具体的には、共に新型コロナウイルス感染症に関連したテーマではあっても、今回の内容は「ウイルス感染」という医学の範疇のものであるのに対して、6日前の内容は差別や偏見という個々人や集団の心理の問題であるという認識です。
前者は自然現象を扱う自然科学、後者は人間やその行為を考察する人文科学と、少なくても学問の分類上は非常に異なる分野です。

そしてこのような明確な線引きが行われていれば、2つの事柄を結びつけて考えることは難しくなることが予想されます。
その結果例えば「たとえ新型コロナウイルスの感染拡大がきっかけだとしても、バッシングは差別や偏見から生まれるあくまで心の問題であり、感染それ自体とは別の問題である」との認識から、両者を切り離して考えてしまうことなどが想定されます。

最後に今回指摘したような感染しやすい、あるいは感染が広範囲に広がっていることが予想される職種が、今後注意喚起などの目的で政府の公式見解として公表されることにでもなれば、当事者の方々の生活に対する悪影響は、一メディアの報道とは比べものにならない規模になることを危惧しています。

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