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私説:マスメディアの与党圧勝の投票予想が有権者に及ぼす影響

マスメディアの与党圧勝の投票予想が有権者に及ぼす影響の考察

もうじき衆議院選挙の投票日(12月14日)ですが、この時期になりますと各マスメディアが投票予想を報道し、今回も現与党の自民党の優勢が伝えられています。
そしてこのような報道が有権者の「どうせ投票しても無駄」旨の諦めを促しているとの批判をしばしば聞きます。
以前はその指摘通りだと思っていましたが、よく考えてみると、あながちそうとも言えない気がしてきました。
選挙では様々な考えの方がいるでしょうから、それぞれについて予想される反応を考察してみました。

選挙に無関心な有権者への、与党圧勝の選挙予想の影響

まずはこの指摘がもっともよく当てはまると思われる、選挙に無関心な有権者の方々です。
この方々は確かに与党圧勝の予想を聞いて「どうせ投票しても無駄」と思い恐らく投票には行かないでしょう。
ですがこの方々は、もしその情報を見聞きしなければ投票に行ったのでしょうか?
恐らくそれでも行かないのでないでしょうか。元々無関心なのですから。

ですから選挙に無関心な方々への与党圧勝の選挙予想がもたらす影響は、選挙に足を運ぶか否かの選択よりも、行かなかった理由の正当化に寄与することではないかと思われます。
つまりもし与党圧勝の選挙予想がなされなかったとしても、単に行かなかった理由が別のことに置き換わるだけに過ぎないのではないかと思われます。

選挙でどの政党や候補者に迷っている有権者の方々への、与党圧勝の選挙予想の影響

次は選挙に関心があり投票へも行きたいと考えている有権者の方々です。
この方々が本来必要としているのは、投票の判断材料となる「政策」などの情報のはずです。
ですがそれでも予め「与党圧勝」の予想を見聞きすれば「どうせ投票しても結果を左右しないから無駄」と思う方も出てくると思います。

ですからマスメディアの予想報道に最も大きな影響を受けるのは、この方々ではないかと思われます。
ただこのカテゴリに属する方が実際どれほどいるでしょうか?
よく街頭インタビューなどで選挙に行かない理由を尋ねられて「どこ(あるいは誰)に入れて良いのか分からない」と答える方がいらっしゃいますが、それは果たして投票先を決めるためにそれなりの努力を重ね、それでも判断できなかったからでしょうか?

あくまで私見ですが、そのように表向き答える方の大多数は「どこ(あるいは誰)に入れて良いのか分からないし、そのために時間と労力を使うのも面倒」という感じなのではないでしょうか。
(そうなのか否かは、政治について少し突っ込んだ話をすれば判明すると思います)

ですからこのカテゴリに属する方へのマスメディアの与党圧勝の報道が与える影響は大きいと予想されますが、カテゴリ自体の絶対数は決して多くないと思われます。

野党候補に投票することに決めている有権者の方々への、与党圧勝の選挙予想の影響

続いて野党やその候補に投票することに決めている有権者の方々への影響です。
この方々も上述のどの政党や候補者に迷っている方々と同様に、予め「与党圧勝」の予想を見聞きすれば「どうせ投票しても結果を左右しないから無駄」と思う方も出てくると思います。

ですがもし選挙に積極的な方でしたらどうでしょう。
そのような方が「与党圧勝」と聞けば、危機感を感じてむしろ是が非でも選挙に行かなければと思うのではないでしょうか。

ですから野党候補を応援する立場の方への影響は、どちらに転んでもおかしくないと思われます。

与党候補に投票することに決めている有権者の方々への、与党圧勝の選挙予想の影響

最後は野党やその候補に投票することに決めている有権者の方々への影響です。
この方々はマスメディアの投票予想にはそれほど影響を受けることはなく、それゆえ他の立場の人々のみの投票放棄を促し、その結果本当に与党圧勝の結果に終わってしまうというのが批判者の想定するプロセスだと思われます。

ですが前二者の立場の方が影響を受けると同じく、与党を支持する方も理屈の上では影響を受けるはずです。
具体的には「そんなに圧勝するなら自分一人が投票しなくても結果を左右しないだろう」という考えが頭を過ってもおかしくないはずです。
ただし「組織票」という言葉に表されますように、この立場の方々は熱心な方が非常多いのはよく知られていると思います。

マスメディアの与党圧勝の投票予想が有権者に及ぼす影響は、情報の受け止め方次第で大きく変わる

以上のように元々無関心な方を除くすべての方がマスメディアの予想報道の影響を少なからず受ける可能性を考えますと、理屈の上では「与党圧勝の投票予想=与党に有利に働く」とは必ずしも言えず、したがってもっとも大きな影響は選挙に行かない理由の正当化に寄与することによる無関心の助長ではないかと思われます。

また「助長」という言葉を用いてますように、その無関心も元々の状態が「そうなるのも当然」とのお墨付きを得たかのように膨らんだだけで、無関心の責任の所在は基本的に個々人にあり、また投票率の低下が与党に有利に働く根本的な理由は各カテゴリに属する方々のモチベーションの違いであるというのが私の考えです。

ですからマスメディアの与党圧勝の投票予想がただちに与党に有利に働くわけではなく、それはむしろ情報の受け手である有権者の受け止め方に大きく左右されるものと考えられます。

ただし投票率の低下という結果を予測しながら与党圧勝の報道を繰り返しているのだとすれば、与党の勝利に加担しているとの批判にも一理あると思います。

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