カウンセリングの場で、カウンセラーは「クライエントが(カウンセラーにとって)思いもかけないキッカケで立ち直って行く」のを目の当たりにします。
このことは、カウンセラーの投影の引き戻し(逆転移の解消)に一役買っています。
受け入れられない「気づき」=投影(逆転移)
カウンセリングの場ではクライエントが、実に様々な「気づき」によって立ち直って行かれます。ところが、その「気づき」をカウンセラー(私)が、頭(理屈)では受け入れられない場合があります。
気づきが受け入れられないのは、何らかの理由でカウンセラーの心から抑圧された部分をクライエントの「気づき」の中に見ている(=投影*)からと考えられます。
*カウンセラーの投影は、逆転移と呼ばれます。
投影の引き戻し(逆転移の解消)
しかし、頭では受け入れられなくとも、クライエントはその「気づき」で立ち直ったのです! この事実は否定しようがありません!
カウンセリングの場で生じる「気づき」のインパクトは凄まじく、「理屈抜きに受け入れよ」とカウンセラーの心に迫って来るため、事実として認めざるを得なくなります。
やがてカウンセラーの心に変化が生じ、「こういうことでも、人は変わって行けるんだ!」と素直に受け入れられるようになります。こうして、それまで生じていた「気づき」に対する否定的な感情が消えて行きます(=投影の引き戻し、逆転移の解消)。
いったん投影が引き戻されると、次回以降に同じような「気づき」が起こった際には、まったく抵抗なく受け入れられるようになります。
カウンセラーの自己成長としてのカウンセリング実習
通常、カウンセラーのトレーニングの場におけるカウンセリング実習の目的は、技法・態度の習得であり、「投影の引き戻し」は教育分析やインナーワーク(ひとりで行うカウンセリング)を通して達成されるを思われていますがが、上述のように「カウンセリングの場」においても生じています。
教育分析やインナーワークによる投影の引き戻しは、大変な労力を必要とします。それに比べると、カウンセリングの場で生じる「投影の引き戻し」は、(私が経験した限り)遥かに容易に起こるようです。
この意味で、トレーニング中にできるだけ多くの方のカウンセリングの機会を持つことは、とても重要なことに思えます。
受容的態度の大切さ
もっとも、投影の引き戻しが生じるためには、カウンセラーに受容的な態度(起こったことを「価値判断せず、あるがままに」受け入れる態度)が備わっている必要があります。
※この記事は、教育分析やインナーワークの必要性を否定するものではありません。教育分析やインナーワークをとおして「個人的な問題」に取り組むことも、カウンセラー自身の自己成長のためには欠かせないことです。
「投影」に関する本
心理カウンセラーの逆転移 解説本” rel=”noopener” target=”_blank”>心理カウンセラーの逆転移 解説本