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他人のための人生…@自己愛性人格障害

他人の欲求に従った人生…

「自己愛的性格を発展させる恐れがある人々は、言語化されない情緒的メッセージに対して生まれつき他人よりも敏感であるようである。特に自己愛は、他人の口には出されない情動、態度、期待に対して必要以上に合わせているように見える幼児と関連づけられてきた。
…たとえば天性の直感力を持ち、養育者自身の自尊心を維持するために無意識的に利用されてしまう子供が多くの家庭にいて、こうした子供は自分がいったい誰の人生を生きることになっているのか混乱した状態で成長する。」(パーソナリティ障害の診断と治療 P.201)
これは抑うつ傾向が優勢なタイプの自己愛性人格(障害)の人々の「自分よりも他人の欲求に従って生きているような人生」を表したものです。
自己愛性人格(障害)の人々は、自分の能力や価値に対して基本的に不信感を抱いていますが、抑うつ的な自己愛性人格(障害)の人々の場合、それを他人の欲求を自分の欲求と信じ込むことによって補う傾向があります*。
*誇大的な自己愛性人格(障害)の人々の場合は、自らを万能と信じ込ませることによって補い、またその確証を得るために他人の賞賛を求めるので「要求がましく」なります。

仮の自分…

このような他人の欲求に導かれた人生を送ることは、本来の自分に触れることを困難とし、いつしか本来の自分に代わって偽りの自己と呼ばれる仮の自分を本当の自分と信じ込むようになります。この偽りの自己には核というものがなく、その場その場の他人の欲求によって容易に変化してしまう代物のため常に不安定な状態に置かれます。
こうして他人の影響に極めて晒されやすく、翻弄される自己を守るために自分のことだけに意識が集中する人格(=自己愛性人格)が形成されて行きます。
ここで注意が必要なのは、欲求の取り入れが決して他人から無理強いされたものではなく、また無意識に行われる点です。欲求の取り入れは誰からも気づかれることなく水面下で進行して行きますので、このプロセスを防ぐのは大変難しいのです。
※「人格障害の定義」「自己愛性人格障害の定義」についてもご一読ください。

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