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自分を苦しめた人物に「救われた」と感じる奇妙な感覚が、不本意な関係を持続させる~自己愛講座20

少し間が開いてしまいましたが「抑うつ型の自己愛タイプの人のお説教の特徴その1~強烈な蔑み:自己愛講座講座19」の続編です。

自己愛的な人は自分の自尊心を満たすために他者を執拗に操作する

自己愛講座16」にも書きましたように、誇大型・抑うつ型の違いに関わらず自己愛的な人は、他人を自分の自尊心を満たすための道具のように扱う傾向がありますが、このニーズが自分にとって都合が良い状態に他者を促す、つまり他者操作という行為を生み出します。
そしてこの他者操作が、延々と続くお説教においても巧妙に行われるために、ターゲットとなっている人が不快感を感じつつも巻き込まれ続ける一因となっているのではないかと考えられます。

自分を苦しめた人物に「救われた」と感じるという奇妙な感覚

このような巧妙な他者操作の一例として、お説教とは異なりますが私自身の体験を紹介致します。

これは写真家として活動し始めたばかりの頃のことです。写真展などの展示ではレセプションと呼ばれる親しいお客様を招いたパーティーのようなものが行われるのですが、通常それはお祝いの席として和やかなものとなるのが恒例です。

ところがこの時は違っていました。展示作家が前に出てスピーチをする度に、すべての作家に対してではないですが罵声を浴びせる人がいたのです。
おかげでレセプションの席は、しんと静まり返ってしまいました。
あいにく私もそのターゲットなってしまい、人前で話をすること自体が得意ではないこともあって、すっかり気が動転してしまって上手く話せず、そのことで余計に恥ずかしさでいっぱいとなりました。

その恥ずかしさや惨めさを感じつつ、逃げ去るようにして人の輪の中へ戻った時、今しがた罵声を浴びせられた人から「いろいろ言ったけど良かったよ」と言われ、それを聞いた私は「この人の言葉に救われた」と感じ「ありがとうございます」と心から感謝の言葉を伝えました。
もっとも、しばらくしてから自分を救った張本人がそもそも自分を陥れた人物であることを思い出してからは腹が立ってきましたが、少なくても声を掛けられた瞬間は、本当に「助かった」と思ったのです。

その自分を苦しめた人物に「救われた」と感じる奇妙な感覚が、不本意な関係を持続させる

この私の体験を一般化すれば、人間は追い詰められて気が動転しているときには、どんなに些細な助けにも、その人のことを救世主として崇めるかのように、盲目的に理想化してしまう可能性があるということです。
それほど精神的な危機に瀕している人間の心は心細い状態にあり、すがるように助けを求めているのだと思われます。
またこのことはコフートが理想化自己対象の機能として「不安を鎮め安心感を与える」ことを挙げている点とも合致します。

※同様のことは監禁されたりDVの被害を受けている人が、その加害者に対して愛着を感じるようになることについても言えると思われます。

そして私と同じような体験が、長時間のお説教をはじめとした自己愛的な人との関わりの中でもしばしば生じ、そのことで一時的にでも自分に精神的苦痛を与えたまさにその人を自分を救ってくれた恩人のように崇める状態が生まれるのだとすれば、私の経験した感謝の念は非常に強いものでしたので、こうした体験が繰り返されることで「この人は確かに酷い人かもしれないけど、優しいところもたくさんある」との印象や、あるいは「この人は本当はとても優しい人なのに不器用だからそれを素直に表現できないだけ」というような解釈を生み出すことに繋がって行くのかもしれません。

そしてこのような印象や解釈が生じてしまいますと、もともと好きになって付き合い始めたのでしょうから、悪い面ばかりではないように思える彼や彼女と別れたり距離を置くことを考えるよりも、むしろ何とか理解してあげたいという気持ちになったとしても不思議はないように思えます。

なぜならこうしたパートナーとの間の相談事例では、耐え難いほどの苦痛を感じながらも別れた後の相手のことをとても心配し、何とかして力になりたいと思う方が非常に多いためです。
このような気持ちは、相手の良いところをたくさん知っている(記憶している)からこそ生じるものだと思うのです。

また同じく「自己愛講座16」に書きましたように、自己愛的な人は相手を蔑むことで自尊心を感じることができるような人間関係を、たとえ無自覚であったとしても強く望んでいると考えられますので、今回のような些細なことにでも相手が非常に感謝してくれる状況が生じるというのは、非常に好都合なことのはずです。

ですからどこかの時点でこの効果を学習して、飴と鞭を使い分けるかのように、相手を徹底的に弱らせておいて、ここぞというタイミングで優しくする術を心得ている人がいてもおかしくないと思っています。あくまで解釈ですが。

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