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自分で自分を愛せないから、代わりに他人から過剰に愛してもらう必要があるのが自己愛の病理の姿~自己愛講座5

予定されていた内容と異なりますが自己愛講座5を投稿させていただきます。

対象愛を達成するためには自己愛の状態を通過する必要がある

少し前に放送されたNHKEテレ「100分de名著」エーリッヒ・フロム「愛するということ」の第3回「生身の人間とつきあう」を見ていると次のような話が出て来ました。

「自分で自分を愛せない人は他人を愛することはできない、だから他人を愛せるようになるためには、まず自分を愛せるようになる必要がある」

これは私が普段説明に用いている精神分析用語を使えば、フロイトが「ナルシシズム入門」の中で対象愛と名付けた「他人を愛する・思いやる心」が育まれるためには、その前に自分を愛する(=自己愛)の状態を確立できていなければならないということになるかと思います。
フロイトは「自体愛→自己愛→対象愛」という人間関係の発達過程を想定していました。
(今回は自体愛の説明は省略させていただきます)

実は自分で自分を愛せない自己愛の病理の姿

なお、このように説明しますと、病理的な自己愛とは自分だけを愛する状態に留まっている状態と思われるかもしれませんが、実はそうではありません。
かつての私を振り返ったり、お客様の話を伺っていて分かることは、自己愛の病理に苦しむ人は自分を愛しているどころか自分を少しも好きになれない方がほとんどです。
え?と思われるかもしれませんが、本当にそうなのです。

ですから自己愛の病理とは自分を愛し過ぎる病理ではなく、むしろ自分を愛せない病理とさえ言えます。
自分で自分を愛することができず、その辛さから逃れるために、代わりに他人から(不足分も含めて)過剰に愛してもらう必要がある、この欲求(必要性)がよく知られた絶え間なく承認や賞賛を求める症状として表れているわけです。
自己愛という言葉で表されているにもかかわらず、実はその状態すら達成できていないのです。

しかしこの理論ではナルシストと形容されるような自惚れの激しい人のことを説明できません。
次回の自己愛講座では、そのような如何にもナルシスティックな方の自分の愛し方の特徴について書かせていただく予定です。

「自己愛講座5」参考文献

エーリッヒ・フロム著『愛するということ』、紀伊國屋書店、2020年
ジークムント・フロイト著『エロス論集』、ちくま学芸文庫、1997年
(「ナルシシズム入門」が収められています)

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