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サイコドラマ(心理劇)の治療の成否を握るのは参加者の共感的態度-間主観性心理学

サイコドラマとは?

サイコドラマとはモレノという人が開発した集団心理療法で心理劇とも呼ばれます。
具体的にはクライエントの抱えている心理的な問題、特に対人関係の悩みに対して、ワークショップの参加者にそれぞれの役柄を演じてもらい、その場に状況を再現することで洞察を促します。

サイコドラマとゲシュタルト療法の違い:

イメージ療法の一つであるゲシュタルト療法との比較でいえば、ゲシュタルト療法のエンプティチェア(空の椅子)ではクライエント自身が座る椅子を変えながらそれぞれの役柄を順番に演じていくのに対して、サイコドラマではワークショップの参加者がそれぞれの役割を分担して演じることで演劇(心理劇)のようなスタイルとなります。
またサイコドラマではクライエントが心理劇に加わらず、他の参加者が演じる心理劇を観察するスタイルがとられることもありますが、ゲシュタルト療法ではあくまでクライエント本人がそれぞれの役柄を演じることが基本です。

間主観性心理学によるサイコドラマ再考:

私はこのサイコドラマを、夢を利用した心理カウンセリング(夢分析)のトレーニングの場で教わりましたが、当時は参加者がそれぞれの役柄を演じることでクライエントの直面している対人関係問題の状況が「本当に再現される」と信じていました。
しかしその後、心理カウンセリングや夢分析に間主観性心理学(間主観性に重点を置いた自己心理学)の治療理論を取り入れるようになってからは、当時抱いてた考えに疑問を持つようになりました。

間主観性における関係性(対人関係)の理解:

間主観性心理学の理論では、人と人とが出会う対人関係において何らかの心理的影響がお互いに生じることは避けられず、その影響には個人の心理的な属性(性格・価値観など)が色濃く反映されていると考えられています。
このため間主観性心理学の治療理論では、クライエントが語る話や心理カウンセラーに示す態度は純粋にクライエントの心の世界(精神世界)を表したものとはいえず、それはクライエント-心理カウンセラー間の関係性(対人関係)から生じたものであり、したがってクライエントの話や態度は心理カウンセラーの言動や態度・醸し出す雰囲気の影響を受けた結果生じたものであると考えます。

サイコドラマはクライエントの問題状況をそのまま再現するものではない:

この間主観性心理学の関係性(対人関係)の理論からすれば、サイコドラマで演じられる心理劇がクライエントを悩ませている対人関係の状況を純粋に再現したものでないことは明らかです。
個人カウンセリングにおける心理カウンセラーがそうであったように、サイコドラマの参加者も役柄を演じることで(どんなに上手く演じたとしても)自身の個人的属性を表出せざるを得ません。
その結果サイコドラマで演じられた心理劇は役柄を演じた参加者それぞれの個人的属性に脚色されたものとなるため、もはやクライエント個人の精神世界における対人関係(対象関係)を反映したものとはいえなくなります。

サイコドラマの治療の成否を左右するのは参加者の共感的態度:

ではサイコドラマの治療の成否の鍵を握るのは何でしょうか?
おそらく治療が成功に終わったサイコドラマでは、役柄を演じた参加者の方々がおおむね治療的に振舞った、言葉を変えればクライエントから「自分の気持ちに共感して演じてくれている」ように見え、さらには心理劇を周囲から見守る観客の態度も共感的に感じられた、ということなのだと推測されます。
参加者の方々が自分のために一生懸命に、しかも共感的に演じてくれる。さらにファシリテーターも含めた周囲の方々もこれまた共感的に見守ってくれる、このような心温まる雰囲気を体験することで傷ついたクライエントの自尊心が高められる。これがサイコドラマの治療効果の真髄のように思えます。
サイコドラマによる治療において大事なのは心理劇の内容からもたらされる知的洞察ではなく、ワークショップの参加者の受容的・共感的な態度からもたらされる自尊心や自己肯定感の高まり。私にはそのように思えてなりません。

モレノほか、サイコドラマ解説本

自己心理学の新たな潮流-間主観性心理学(間主観的アプローチ)解説本
個人的には丸田俊彦氏の著書が分かりやすくオススメです☆

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