1ページ目と2ページ目で取り上げた東日本大震災における心理的介入の失敗例について、引用した『『心理職のためのエビデンス・ベイスト・プラクティス』』では、その原因をエビデンスの軽視としていますが、仮にエビデンスの知識がなかったとしても、今回のような事態は回避できた可能性があると私は考えています。
不安障害の人は一般的に主訴の不安に非常に過敏になっている
これはPTSDがカテゴライズされている不安障害一般に言えることと考えられますが、この診断名に該当する方の多くは、主訴(最も辛い症状や悩み)が不安に関するものであるため、心配事や外界の出来事などに対して過敏に反応する傾向があるように思えます。
このことを考慮致しますと、今回の震災における心理的介入に見られるような、絵を描いている最中に体が硬直したり、その後悪夢にうなされると言ったPTSD様の症状が生じるケースでは、絵を描くように促された時にまったく平気だったとは想定しづらく、むしろ不安な反応を示してもおかしくないのではないかと考えられます。
ですからそうした子どもの反応に注意していれば、今回のようなケースのいくつかは防げたのではないかと考えられます。
なおクライエントの反応を注視することは、PTSDや他の不安障害に限らず、あらゆるケースでも役立つ姿勢と考えられます。
なぜならクライエントの否定的な反応は、セラピストの介入の誤りを示してくれる重要な情報源と考えられるためです。
トラウト体験を想起させるような介入は安易に行うべきではない
またトラウマ体験を有する人に対して、その体験を想起させるような心理的介入は、現在はエビデンスが得られている持続エクスポージャー療法を用いるか、あるいはそのことに対してクライエントが意欲的な場合を除いて極力控えるべきとの考えが主流となっている点も補足しておきます。
参考ページ:PTSD|病名から知る|こころの病気を知る|メンタルヘルス|厚生労働省の「PTSDの治療」の項目