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誰からも嫌われたくないと思っている人は他人のペースに巻き込まれやすく、かつ誇大感が隠されていることがある~自己愛講座22

以前に自己愛講座16171920を通して自己愛的な人がしばしば行う長時間にわたるお説教について書きましたが、今回はそのターゲットとなりやすい人の特徴を、より一般化した形で書きます。

他人に巻き込まれやすい人の典型はノーと言えない人

相手の行為が不快にもかかわらず、それを甘んじて受け入れ耐え忍ぶしかない状態になってしまう人の典型は、いわゆるノーと言えない人です。

冒頭のこれまでの自己愛講座で触れましたように、誇大モードにある時の自己愛的な人は相手の気持ちを察したり相手の立場に立って物事を考えることが苦手なため、自分の行為が相手の迷惑なっていることに気づくことが難しく、むしろ相手のためになっていると確信していることも少なくありません。
そうした錯覚に陥っている人を前にして迷惑であることを伝えることができなければ、その人は相手のためを思って、その迷惑行為を続けることになってしまうでしょう。

ノーと言えない人の典型は、誰からも嫌われたくないと思っている人

ではどんなに不快な状況でもノーと言えない人は、何を恐れてそうしているのでしょうか?
それはノーと言うことで相手が気分を害し、そのことで相手から嫌われる恐れです。
言葉を変えれば、誰からも嫌われたくないとの強い思いがあるということです。

人から嫌われることへの極度の不安の背後には「たちまち人を魅了してしまう」誇大的な理想像が隠されていることがある

またこの「誰からも嫌われたくない」との強い思いは、誰からも好かれるような素晴らしい人間になりたいとの思い(理想)の反映であることがあります。

昔、小さなわかいい女の子がいました。その子を見た人は誰でもその子が好きになりました(『初版グリム童話集1』P.136)。

グリム童話の「赤ずきん」は、このような書き出しで始まります。
見た瞬間に誰でも好きになるような人物とは相当魅力的な人でしょうが、人には好みというものがありますので、現実にはそこまで他人を魅了してしまう人など存在しません。
それにも関わらず、誰からも嫌われたくない思いの強い人の中には、しばしばそのような人が現実に存在し得ると考え、それゆえそのような人間になりたいと願い、あるいはそのような人に巡り合いたいと願う人がいらっしゃいます。

このように誰からも嫌われたくないという思いが強い人の心の中には、現実には存在し得ないほど魅力的な人物という、誇大的なイメージが潜んでいることがあります。
この場合、その誇大感がもたらすあまりに高い完璧主義的なハードルが、その人を苦しめていることになります。

こうした誰からも嫌われたくないという思いが強すぎて、それで苦しんでいる人には以前に著書を紹介したことのある岸見一郎さんが書かれている『嫌われる勇気』のような発想が必要と思われます。
それがとても勇気の要ることだとしてもです。

人間性への非常に高い理想は自己愛な人に共通した心理

また実はこうした人間性への非常に高い理想は自己愛な人に共通した心理でもあります。
どんなにナルシスティックで自己中心的な人でも、内心は限りなく素晴らしい人間になりたいと思っていて、しかし誇大感が強すぎるために自分が既にその域に達していると錯覚して前述のような態度になってしまっているだけなのです。
例えば以前の投稿の延々と続くお説教にしても、ご本人からすれば限りなく素晴らしい人間がそうではない人間を哀れに思い、慈悲の心から正しい道へと教え導く行為に他なりません。

同じように高い人間性を求めていても、その人が誇大モードにあるのか抑うつモードにあるのかによって、これだけ違う態度となって表れるのです。

次回はターゲットなりやすい人のもう一つのタイプについて掲載する予定です。

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