ナンシー・マックウィリアムズ著『パーソナリティ障害の診断と治療』

「罪悪感」と「恥」の違い

3年前に作成した恥と罪悪感との違いの記事では、自分を批判や非難する対象が心の中と外側のどちらに存在するかによって両者を区別しました。
しかしその後、ネガティブな言動をする対象が心の中に存在する、つまり他者から実際に批判や非難を受けなくても恥の感覚が生じることがあるように思えてきましたので、補足としてこのページに記載いたします。

他人から批判や非難される恐れ(=恥の感覚)は、その場に相手がいなくても生じる

皆さんもご経験があるかと思いますが、誰かから実際に非難されたわけではないのに、そうなるかもしれないと思っただけで不安になってくることがあります。
このような心の働きは、物事を先取りして不安を感じることから予期不安*と呼ばれます。

*補足) 予期不安は不安障害の中核的な症状であり、これを緩和することが治療の成否を握っていると考えられています。

ここでは自分に対して非難の矛先を向けているのは他者ですが、それはあくまで他者のイメージであるため心の中に存在しています。
このためこうした心の中で生じる他者との関係は、精神分析ではしばしば現実の人間関係(対人関係)と区別するために対象関係と呼ばれます。

しかしその仮想的な存在にすぎない他者のイメージにさえ、私たちは現実のその人に対するものと同じような感情や感覚を抱いてしまうのが実情です。

以上のことから、観客としての他者が存在しない罪悪感という感覚は、心の中にさえ他者(のイメージ)が存在しない状態を指すことになるため、今日ではかなり稀な心理状態と言えるのではないかと考えられます。

ナンシー・マックウィリアムズ著『パーソナリティ障害の診断と治療』
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