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自己分析の体験から、特定の心理療法の効果を高く評価する心理は不確実性への不安心理から生じた理想化の防衛機制の産物に過ぎず、各心理療法の効果はクライエントの病理水準や自己理解の程度をはじめとした心理状態に大きく左右されることを知るに至りました。

自由連想法で生じた自己受容体験:

抑うつ型自己愛性人格障害に潜む罪悪感からの自殺衝動と人の役に立ちたい気持ち-自由連想法による自己分析・治療での体験は、私のこれまでの心理療法の治療効果に対する考えを覆すものでした。
この自由連想法による自己分析では、途中から自殺に結びつくような過剰な罪悪感が次々と空想されてきたため「これはゲシュタルト療法による自己傾聴で罪悪感に苛まれる自己を共感的に支えないと、本当に自殺衝動に駆られてしまうかもしれない」と不安になりました。
しかし結果的にはそのまま自由連想法を続けるうちに、その罪悪感の元となっている無意識的な強い欲求(人の役に立ちたい)に気づき、なおかつその欲求を実感しつつ認める(自己受容)ことができたため、そのような心配は杞憂に終わりました。
この自己分析を行う前までは自由連想法による自己分析・ゲシュタルト療法の心理カウンセリングへの効果でも述べましたように「自己洞察には自由連想法による自己分析、自己受容にはゲシュタルト療法による自己傾聴が最適」と確信していましたので、自由連想法による自己分析のみで自己受容がなされたことは私にとって驚きでした。
また驚きとともに以前にスーパーバイザーから言われた次のような言葉を思い出していました。
(自由連想法による自己分析の治療効果を話す私に対して)「それは田尻さんが無意識の心理をそれだけ上手に拾えるようになったからだと思います。もし他の心理療法を用いたとしても、今の田尻さんなら同じような効果が得られるはずですよ。」
この当時の私は自己分析に自由連想法を用いた途端、今まで考えたこともないような(したがって無意識の)奇妙な思考が次々と表れてきたことに興奮を覚えていたため、そのスーパーバイザーの助言がまったく理解できませんでした。

自己分析の継続による自己受容力の高まり:

しかし今回の自己分析での自己受容の体験で、当時のスーパーバイザーの助言に納得しました。
おそらくゲシュタルト療法による自己傾聴を思いついた頃はまだ、自己受容がなされるためには傷ついた自己を別の自己が心理カウンセラーのように傾聴して受容的な雰囲気を作ることが必要でしたが、その後さらに自己分析や自己傾聴を続けることで精神的な強さのようなものが培われ、結果これまでは受け入れられなかった(意識化されなかった)心理が受け入れられるようになった(自己受容)のではないかと考えられます。

心理療法の効果への理想化の防衛機制と不安心理:

したがって心理カウンセリングに用いられる各心理療法の効果はクライエントの病理水準自己理解の程度をはじめとした心理状態に大きく左右されるものと思われます。
またそれにもかかわらず当時の私に生じていた自由連想法やゲシュタルト療法の治療効果(自己洞察および自己受容促進効果)への高い評価は、世の中におびただしい数の心理療法が存在し一体どの心理療法を信じればよいのか分からない不安心理を防衛するために特定の心理療法を理想化する防衛機制の表れのような気がします。
もしかしたら先のスーパーバイザーの助言も、私の自由連想法への理想化の防衛機制の危険性を敏感に感じ取り、暗に警告されたものなのかもしれません。
そのときのスーパーバイザーが私の語る自由連想法の効果を繰り返し否定されていたことも、理想化の防衛機制への危惧を示しているように思えます。


P.S. その後、心理療法の治療効果についてさらなる洞察がありました。
心理療法と心理カウンセラーとの相性と自尊心の傷つき

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